ベトナムの工業団地事情 第8回 工業団地のセキュリティ(警備体制)
第8回 工業団地のセキュリティ(警備体制)
ベトナムで工場や倉庫を運営する上で重要なのが、セキュリティ(警備)対策である。外部からの不審者の侵入を防ぎ、工場内の機材や製品の盗難を防ぐために、しっかりとした対策を取っていないと痛い目に合ってしまう。殺傷事件などの凶悪犯罪は比較的少なく治安の良いベトナムではあるが、盗難・窃盗などの軽犯罪は決して少なくない。解雇されたなどの逆恨みから、工場に侵入して製品を持ち去ろうとする輩もいるようだ。今回は、ベトナムにおける工場のセキュリティ(警備)についてご案内したい。
ベトナムでの犯罪事情
ベトナムは殺傷事件などの凶悪犯罪は比較的少ないものの、盗難・窃盗を含めた軽犯罪の件数は決して少なくない。工場を持つ企業にとっては、以下のような点に注意しなければならない。
オフィス:最も多いのはノートパソコンやスマートフォンなどの盗難だ。特にお昼時など、一瞬だけ無人になった隙に盗まれるようなケースもある。また、中には退職した社員が入館証や制服を着て堂々と侵入してくることもあるようだ。犯行方法の一例ではあるが、天井裏からオフィスへの侵入が可能である場合があり、パソコンが丸ごと盗まれていた事例もある。
工場:工場は金目なものの宝庫である。たとえば、銅は換金性が高く、避雷針によく使われている銅線ケーブルなどの窃盗事件が多発している。ワーカーが服の下に隠したりなどして、工場から持ち出すのだ。ほかにもアルミの塊や真鍮なども高額で売れるため度々盗難に遭い、更にゴミ置き場の鉄くず、プラスチック製のパレット、段ボールが盗まれた例もある。
駐輪場:ベトナムでは、バイクの盗難が頻発している。バイクが財産の一部である国民にとってはバイクの盗難は一大事であり、会社の敷地内で盗まれたとして会社側に補償を求めてくるケースもある。また、ガソリンをペットボトルに移し替え、持ち出すような窃盗も多発しているという。
トラブル:対人関係に関連したトラブルがそのまま窃盗などの犯罪につながるケースもある。業者変更や企業への不採用による逆恨みや、ワーカー同士の喧嘩が傷害事件、襲撃事件に発展する場合も多い。また、ワーカーやスタッフが材料などを持ち出す、外部と結託して完成品を盗むなど、内部犯行に発展するケースも少なくない。
工場においてもこのように軽犯罪、窃盗や盗難などが相次いでいる。工場を保有する企業にとっては、これらを未然に防ぐための抑止力、または犯罪が発生した時の証拠保存としての設備も必須になってくる。
工場の人的警備
レンタル工場を運営している工業団地の場合は敷地全体をフェンスで覆い、警備員を常駐させて巡回させている場合が多い。こういった所では敷地内への入退場についても管理されていることが多く、従業員へはカードを発行する、第三者には届け出を出すよう要求している場合もある。しかし、各テナントの工場の警備については、テナント側で手配しなければならない。ベトナムにはALSOKやSECOMといった日本の大手の警備会社が進出しており、よく訓練された警備員を派遣してくれるため安心だ。しかし、工場の従業員がローカルの警備員と結託して、日中に出荷を装い自社製品を持ち出し転売する事件も起きているので、警備員を雇っているからと言って必ずしも安全とは限らない。日本人の責任者が毎日警備員に声を掛けて、コミュニケーションを取っておくことも必要だ。
機械警備
先述したような窃盗を未然に防止するために、以下のような機材をご案内したい。
監視カメラ:抑止力・証拠保存の双方で高い効果を発揮するため、極めて有効な機材である。いくつか種類もあり、ボックス型のカメラは威嚇効果が強く、ドーム型カメラはレンズがどの方向に向いているか判別しにくいメリットがある。手先まで拾える高感度カメラ、夜間でも有効な赤外線カメラ、スマホ・タブレットからの閲覧が可能なIPカメラなど、最新機能を搭載したカメラは、状況に応じて適切な働きをする。
レコーダー:こちらは、証拠保存のためになくてはならない存在である。接続可能なカメラ台数や保存期間が異なるため、自社の状態に応じて選択することが可能。管理が容易という点から、複数台設置することが望ましい。工場建物の内側・外側でレコーダーを分けるなどの工夫もできる。
出入管理システム:工場内で高セキュリティエリアを作るシステム。セキュリティエリアの境界線にシステムを設置し、人の流れをコントロールする。普段はマグネット等で施錠してあり、カードや指紋式、最近では顔認証式も増えている。これら出入管理システムは出入りの履歴を保存し、どこの部署の誰がいつ入退室をしたのか、調べて保存しておくことも可能である。
センサー:オフィス・工場内で何か異変が起きたときに、遠隔地に受診、警備員が初期対応を取れるようにするシステム。窓やドアを感知する開閉センサーや温度上昇による火災を検知する熱感知器など、多様な種類が存在する。
こういった機会警備のメリットとしては、警備員を常駐させる必要がないため人件費を削減できる点である。機械による監視・検知なので人間のようなミスを減らすことができ、24時間体制で警備することが可能である。一方で、初期投資がかかる点や、小動物の振動を感知してしまう誤報が発生する点など、デメリットも存在する。
ベトナムにおいても「機会が盗人を作る」のごとく、真面目によく働く社員であっても、魔が差して窃盗事件を起こさないとも限らない。抑止力、そして証拠保存のための警備システム、機械設備は必要になってくる。セキュリティ会社の担当者に、過去どのようなトラブルがあり、それを未然に防ぐためにはどのようなシステムが有効なのかを相談することが重要である。
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