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  • ブログ 2025/08/08

    ベトナムの工業団地事情 第12回 リスクエンジニアリング

    ベトナムの工業団地事情 第12回 リスクエンジニアリング

    第12回 リスクエンジニアリング

    リスクエンジニアリングとは、起こりうるリスク、火災や労災、犯罪に対してその発生を予測し、予防・軽減させることを目的としたサービスのことである。特にベトナム進出の際には、自社のみではすべてのリスクに対して予防策を張ることは困難を極める。そのため、保険会社など専門の業者に依頼し、調査・検討してもらう場合が多い。本稿では、リスクエンジニアリングサービスの事例についてご案内していく。

    【火災対策】
    製造業にとって、最も気を付けなければいけないことの一つが火災である。自社内でも火災点検等は欠かせないが、リスクエンジニアリングサービスを用い更に効果的な対策を取ることができる。以下に代表的な対策例を挙げてみたい。
    1. 防災調査:敷地内でプロパティに損害を与えるリスクを把握する。主に防火設備や生産設備の不適切な管理、電気設備の不具合などを事前にリスクとして予測する。低圧電気室からの漏電など、火災の原因となりうるものの調査を行うこともできる。
    2. 赤外線カメラ調査:電気配線の異常発熱部をチェックし、電気火災のリスクを減じることを目的としている。サーモグラフィーによって、機材の不備や電線の短絡・地絡といったチェックが可能。また、近年ではドローンを運用した調査も可能であり、従来では調査が難しかった場所の点検も効率的に行うことができる。
    3. 消火設備等の簡易診断:消火器や消火栓などをセルフチェックできるサービス。オンライン上でも実施が可能であり、アンケート結果を維持管理レベルとして点数化、防災レベルの向上に寄与させる。
     
    以上のように、火災リスクとなりうる様々な事項を点検・チェックすることが可能となっている。また、災害へのリスク調査を行っている場合もあり、災害時の対応セミナーが実施されている。

    【労災対策】
    製造業などの機材を多く使う業界は、必然的に労災リスクが高まる。以下のサービスは、労災対策の基本的な事例である。特徴として、労災の件数が特に多いフォークリフトのリスク調査を行うサービスが多い。
    1. 倉庫フォークリフトサーベイ:倉庫、フォークリフトのオペレーションにおける安全を第三者の視点から調査し、リスクの特定・フォークリフトの整備・点検を行う。フォークリフトによる従業員の労災リスク、貨物損害リスクの低減が見込める。
    2. フォークリフト・ドラレコ運転診断:ドラレコによってフォークリフトの運転を解析し、人為的ミスによる物損事故や人的事故のリスクを低減させる。
    3. 労災リスク調査:労働災害防止・労働安全衛生レベルの向上が目的である。労災の要因を、設備的要因、人的要因、管理的要因、環境的要因の4つの観点から調査し、労働安全上の報告書にまとめ、提案する。

    【犯罪対策】
    近年のベトナムではサーバー攻撃の件数が上昇しており、通常の犯罪リスクはもちろん、サイバー攻撃に対するリスクの考慮も必要となっている。
    1. セキュリティ調査:盗難・紛失リスクを減じるための調査。主に監視カメラ、訪問者記録、セキュリティパトロール体制の確認。
    2. サイバーセキュリティ調査:各企業が保有するITシステム環境を調査、細部まで診断し、様々なソリューションの導入、導入後の運用・管理、初動対応についてサポーする。

    【包括的なリスク調査】
    上記のように特定の状況を予想し、事前にリスクを低減させるサービスが一般的であるが、それに加え、包括的なリスクを予想し、対策を打つサービスも存在する。以下はその例である。
    1. BCMコンサルティング:事業継続計画(BCP)の策定・見直し、事業継続マネジメント(BCM)の取り組み支援を行うサービス。企業が実施する事業の影響度やリスクを分析し、事前に対策が必要な場合、洗い出して計画を実施する。教育・訓練による計画への理解促進も行っており、主にセミナーやワークショップ、ロールプレイングによる訓練が為されている。
    2. 工程リスクアセスメント:塗装・ダイカスト工程といったリスクの高い工程において、そのハザード及び対策状況の特定、リスクレベルの評価(発生頻度及び被害の大きさ)、リスク低減のための改善案の提案、改善提案の優先順位付けを行う。
    3. 簡易評価鑑定:既存の保険金額と、簡易評価にて算出された評価額を比較し、保険金額の見直しを図る。現時点での保険金額と評価額を比較することで、契約更新の際に具体的な打ち合わせをすることが可能となる。

    損害保険への加入はもちろん、リスクマネジメントサービスにより更に安全に事業を推進することが可能になる。まずは、事前に自社で発生しうるリスクを可視化させ、それに対応できるような案を事前に検討しておく必要がある。

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