• ja
  • en
  • ブログ 2025/10/20

    ベトナム駐在員事務所設立の要件は?【後編】

    ベトナム駐在員事務所設立の要件は?【後編】

    3. ベトナム駐在員事務所と現地法人の違いを徹底比較

    ベトナム進出を検討する際、「駐在員事務所」と「現地法人」のどちらを設立すべきか迷う企業は少なくありません。両者には活動範囲や税務、設立コストなど多くの違いがあります。本記事では、設立要件や業務内容、運営上の留意点などを項目ごとに比較し、どのような目的やフェーズでどちらを選ぶべきかを明確に解説します。初めてベトナム進出を考える方も、両者の違いを理解することで自社に適した進出形態を検討しやすくなるでしょう。

    3.1. 活動範囲と制限の違い

    駐在員事務所は、「連絡業務」「市場調査」「事業協力活動の促進」など、ベトナムの法律で認められている範囲でのみ活動が可能です。営業活動、契約締結、販売促進、広告、商品・サービスの展示や紹介、現地での子会社設立や出資といった事業活動は認められていません。対して現地法人は、契約の締結、販売促進、広告活動、商品・サービスの展示・紹介など、幅広い事業活動が可能です。現地法人自身の名義で事業を拡大でき、ベトナム国内外に支店や駐在員事務所を設立することも認められています。自社の進出目的や事業計画に合わせて、どちらが適しているかを見極めることが重要です。

    活動範囲 駐在員事務所 現地法人
    営業活動 不可
    契約の締結 不可
    市場調査
    事業協力活動
    支店設立 不可

    3.2. 税務と会計の留意点

    税務面では、駐在員事務所は売上活動がないため法人税や付加価値税(VAT)の納税義務がありませんが、所長や駐在員の個人所得税は必要です。また、会計監査や決算報告書の作成義務もありません。一方、現地法人は法人税、事業登録税、VATなどの納税義務が生じます。また、年次の決算報告書作成や会計監査も義務付けられています。会計・税務対応には現地法規制の理解が不可欠であり、進出後の運営負担にも大きな違いが生じます。進出形態の選定時には、税務・会計の体制構築負担にも目を向けることが欠かせません。事前に信頼できる会計事務所に相談しておくこともポイントの1つとなります。

    3.3. 設立コストと期間の比較

    駐在員事務所は、設立手続きが比較的シンプルで、必要書類の準備やオフィス賃貸契約、所長の任命、許可証申請などを経て、短期間かつ低コストで設立できます。設立費用も現地法人に比べて抑えられるため、初期投資リスクを最小限にしたい場合に適しています。現地法人は、資本金の払込みや政府認可の取得など複雑な手続きが必要で、設立にかかる期間も長くなりがちです。設立費用も高額になるため、事業規模や資金計画を慎重に検討する必要があります。初期の市場調査や事業準備には駐在員事務所、事業拡大には現地法人といった段階的な戦略も有効です。

    3.4. 現地法人のビジネス自由度

    現地法人は、ベトナムにおいて営業活動が認められており、現地法人で契約締結や販売活動、広告、商談、サプライチェーン構築など、幅広いビジネス展開が可能です。また、法人としてベトナム国内外に支店や営業拠点を設立できるなど、事業の自由度が高い点が特徴です。長期的な事業拡大や現地市場での競争力確保を目指す場合、現地法人設立が有力な選択肢となります。

    3.5. 駐在員事務所の初期導入の利点

    駐在員事務所は、ベトナムでの事業立ち上げ前の準備段階に適しており、市場調査や現地ネットワーク構築、事業協力体制の整備などが主な役割となります。設立手続きが短期間かつ低コストで済むため、大きな投資の前に市場環境やビジネスリスクを見極めることができます。実際に多くの企業が、まず駐在員事務所を設立し、現地の状況を把握した上で現地法人へと移行しています。初めての海外進出で不安が大きい場合や、段階的な事業展開を計画する場合には、駐在員事務所の活用が有効です。

    利点 内容
    市場調査 立ち上げ前に現地調査ができる
    設立コスト 低コスト・短期間で設立可能
    リスク管理 大きな投資前に現地リスクを把握できる
    段階的展開 現地法人設立への移行がしやすい

    4. 設立要件を満たすための注意点と失敗しやすいポイント

    ベトナムで駐在員事務所を設立する際には、現地の法規制や手続きの流れを正確に把握することが不可欠です。設立後1年以上の外国企業のみが申請できる点や、活動範囲が連絡や市場調査などに限定されている点に注意が必要です。設立許可証の取得のためには、オフィス賃貸契約や必要書類の翻訳・公証など、各ステップで細かなミスが発生しやすく、書類不備や手続き遅延が失敗の主な要因となります。

    以下で、設立過程でつまずきやすい具体的なポイントと対策を詳しく解説します。

    4.1. 書類不備の防止策

    駐在員事務所設立において、もっとも多い失敗例が必要書類の不備です。申請に必要な書類には、本社の登記簿謄本や前年度の監査済み決算書、所長の任命書、パスポート、オフィス賃貸契約書などが含まれますが、これらはすべて規定通りに揃える必要があります。特に、原本が必要な場合や、追加で提出を求められるケースもあるため、現地の最新情報を確認しながら準備を進めることが重要です。書類作成時には、漏れや記載ミスがないか複数回チェックし、念のため予備のコピーも用意しておくと、急な指摘にも迅速に対応できます。現地ネットワークを活用した情報収集が、余計なトラブル回避に繋がります。

    書類不備の主な失敗例 対策ポイント
    書類の記載漏れやミス 複数回のチェック、予備コピーの準備
    原本提出の指示漏れ 最新の要件確認
    追加提出の要求への遅延 情報収集と即応体制の確立

    4.2. 翻訳と公証の注意点

    必要書類の多くは日本語で作成されているため、ベトナム語への翻訳と公証が必要です。翻訳は指定機関で行うことが求められる上、内容に少しでも誤訳や不備があると再提出となり、手続きが長引く原因となります。また、公文書と私文書では公証の方法が異なるため、各書類の区分を正確に理解しておくことも大切です。特に、登記簿謄本や決算書などの公文書については、認証・翻訳・公証の順序を守ることが求められます。現地での公証手続きの流れや必要日数も事前に確認し、余裕を持ったスケジュールで準備を進めましょう。

    こうした細かな手順の積み重ねが、設立全体のスムーズな進行に直結します。

    4.3. 現地官公庁との交渉術

    設立手続きでは、ベトナム現地官公庁とのやり取りが必須です。申請窓口によって求められる書類や手続きの解釈が微妙に異なるケースも見られるため、事前に管轄の担当者とコミュニケーションを取り、必要事項を明確にしておくことが効果的です。現地語でのやり取りに不安がある場合は、信頼できる通訳や現地サポートを活用しましょう。また、書類提出後も進捗確認を怠らず、追加資料の指示があれば即座に対応できる体制を整えておくことが、交渉を円滑に進めるコツです。

    現地の最新動向を把握し、柔軟かつ冷静に対応する姿勢が成功への近道となります。

    4.4. 設立プロセスの最適化

    設立プロセスは、オフィス賃貸契約、書類準備・翻訳・公証、申請書類の作成と提出、許可証の取得、印鑑登録、税コード取得、初期手続きという流れで進みます。各ステップでの無駄な待ち時間や手戻りを防ぐため、手続き全体のスケジュールを事前に設計し、関係者と共有することが重要です。特に、オフィス契約や書類取得に想定以上の時間がかかる場合もあるため、余裕を持った計画を立てておきましょう。万が一、想定外のトラブルが発生した場合でも、段階的にタスクをこなすことで、全体の遅延を最小限に抑えることができます。

    お問い合わせ

    通常1 営業日以内に担当者よりご連絡いたします。