【パート1】ベトナム駐在員事務所設立の要件は?今知るべき3つの注意点

ベトナムで駐在員事務所の設立を検討する際、法的要件や必要書類、費用や設立期間、現地での活動制限など、押さえておくべきポイントは多岐にわたります。手続きの途中で書類不備や認証の遅れが発生し、思わぬタイムロスを経験するケースも少なくありません。本記事では、最新の法律事情や設立に必要な具体的ステップ、失敗しやすい注意点、現地法人との違いまで、初心者にも分かりやすく整理して解説します。
1. ベトナム駐在員事務所設立で押さえるべき基本要件と最新事情
ベトナムで駐在員事務所を設立するには、現地の法規制や手続きに沿った準備が不可欠です。設立可能なのは、設立後1年以上が経過している外国企業に限られます。駐在員事務所の活動範囲は市場調査や連絡業務などに限定され、営業活動は認められていません。最新の法律改正や必要書類、設立の流れ、現地での活動制限を正確に把握することが、事務所設立の成否を左右します。
・設立要件は厳格に定められている
・営業活動の禁止など事務所の権限には明確な制限がある
・最新法改正や手続きの動向を常にチェックする必要がある
・現地ネットワークの活用が手続き円滑化に有効
1.1. 駐在員事務所設立の法的要件
ベトナムで駐在員事務所を設立できるのは、原則として設立後1年以上経過している外国企業です。活動内容は「連絡業務」「市場調査」「事業協力活動の促進」など、ベトナムの法律で認められた範囲に限られ、契約締結や商品販売などの営業活動は許可されていません。設立の際は、親会社が正式に事務所設立を決議し、所長を任命する必要があります。これらの法的要件を満たさない場合、設立申請が却下されるため注意が必要です。
要件 | 内容 |
---|---|
設立母体 | 設立後1年以上経過した外国企業 |
活動範囲 | 市場調査・連絡業務・事業協力促進など |
禁止事項 | 営業活動・契約締結・商品販売など |
必須事項 | 親会社による設立決議、所長任命 |
1.2. 必要な書類と認証手続き
駐在員事務所設立には、親会社の登記簿謄本や監査済み決算書、所長任命書、パスポート、ベトナムでのオフィス賃貸契約書などが求められます。日本語や英語の書類は、指定機関でのベトナム語翻訳と公証が必須です。さらに、公文書と私文書で認証手続きが異なり、書類準備には慎重な対応が求められます。書類の不備や公証漏れがある場合、申請が遅れるリスクもあるため、段取り良く進めることが重要です。
・提出書類は多岐にわたり正確な翻訳・公証が必要
・書類の種類によって認証プロセスが異なる
・提出前のダブルチェックが遅延防止に有効
・現地の最新要件も随時確認することが重要
1.3. 最新の法律改正情報
ここ数年でベトナムの外資関連法規は複数回改正されています。また、2025年7月からは企業代表者の登録が必要となる電子システムVNeIDが導入されました。今後もデジタル化や行政手続きの効率化が進む可能性があり、最新の制度変更を把握することが不可欠です。ベトナムの法改正は迅速に運用が開始される傾向があるため、現地ネットワークからの情報収集も役立ちます。
1.4. 設立に伴うコストと期間
駐在員事務所設立にかかるコストは、主に公証・翻訳費用、申請手数料、オフィス賃貸料などです。設立プロセスは、オフィス賃貸契約から書類準備、公証、申請、許可証取得、印鑑作成、税コード登録まで約3~4ヶ月を見込む企業が多くなっています。手続きの進行状況や書類の不備によって、期間は前後するため、余裕を持ったスケジュール管理が重要です。
・申請から許可取得まで通常3~4ヶ月程度
・書類不備や現地事情で期間延長リスクあり
1.5. 現地でのビジネス活動制限
ベトナム駐在員事務所は、市場調査や連絡、投資促進活動などが主な役割で、直接的な営業活動や契約締結、収益行為は認められていません。また、現地での資本金設定や事業登録税は不要ですが、活動範囲を逸脱すると行政処分の対象となるため注意が必要です。一方で、法人設立前の準備拠点や市場分析のために柔軟に現地対応できるメリットもあります。ビジネス活動の枠組みを正しく理解し、適切な運営を心がけましょう。
・営業活動は禁止されている
・資本金や事業登録税の負担は不要
・活動制限違反で厳しい行政処分
・現地拠点としての活用が可能
2. 駐在員事務所設立手続きの具体的な流れと必要書類一覧
ベトナムで駐在員事務所を設立するためには、段階的な手続きと明確な書類準備が求められます。まず親会社名義でオフィスの賃貸契約を結び、その後、必要書類の準備・翻訳・公証を進めます。主な必要書類は本社の登記簿謄本、昨年度の監査済み決算報告書、取締役会の決議書(必要な場合)、所長の任命書、所長のパスポート、オフィスの賃貸契約書、不動産関連書類などです。これらを整えたうえで設立許可証を申請し、印鑑登録や税コード取得などの手続きを進めていきます。
・手続きは段階ごとに分かれている
・必要書類は種類ごとに明確に指定されている
・書類の翻訳・公証が必須となる
2.1. 書類準備と翻訳のステップ
駐在員事務所設立に必要な書類は、日本本社から取り寄せるものが中心です。具体的には、本社の登記簿謄本や直近の監査済み決算報告書、所長の任命書、パスポート、取締役会の決議書(状況により)などが求められます。これらの書類は、すべてベトナム語への翻訳が必須です。翻訳後は、定められた機関で公証や認証を受ける必要があり、特に登記簿謄本や決算書などの公文書は厳格な認証手続きを経ることが義務付けられています。こうした準備段階での正確な手続きが、後の設立スケジュールに大きく影響するため、慎重な管理が重要です。
2.2. 公証と認証の重要性
外国語で作成された書類や日本で発行された公文書は、ベトナム当局に提出する前に翻訳・公証・認証の手順を踏む必要があります。まず日本で公証を受け、それをベトナム語に翻訳したうえで、ベトナムの公証機関で再度認証を受けます。私文書(定款、決算書等)も同様の流れですが、必要に応じて追加書類が求められる場合があります。このプロセスを怠ると、申請が受理されない、追加提出を求められるなどのリスクが高まります。設立に要する期間やコストに直結するため、予めスケジュールを組んで進めることが肝心です。
・公文書の翻訳・公証・認証は必須である
・私文書にも同様の手続きが求められる
・手続きの遅延は設立スケジュール全体に影響する
・不備がある場合には追加の書類提出が発生する
2.3. 設立許可証の取得手順
必要書類の準備と認証が完了しましたら、いよいよ駐在員事務所設立許可証の申請に進みます。申請時には、事務所設立許可証の発給申請書を含む一式の書類を揃えて提出します。審査期間は行政の混雑状況によって変動しますが、申請内容に不備がなければ許可証の発給まで比較的スムーズに進みます。許可証取得後に税コードの登録や印鑑の作成といった次の手続きに移る必要があります。設立許可証は駐在員事務所として正式に活動するための根拠となるため、内容確認や期日管理を徹底しましょう。
2.4. 印鑑登録と税コード取得
設立許可証が発給された後は、まず駐在員事務所専用の印鑑を作成し、所定の機関で印鑑登録を行います。続いて、所轄の税務当局で税コード(税務登録証明書)を取得します。これら一連の登録作業を効率的に進めることで、スムーズな事務所開設が実現します。
2.5. 官公庁とのコミュニケーション
駐在員事務所設立手続きでは、現地官公庁とのやり取りが避けて通れません。ベトナム語での書類提出や質問対応が求められる場面も多く、言語の壁や制度理解の不足で手続きが停滞するリスクがあります。問い合わせや書類補正の指示が入った場合、迅速かつ的確に対応することでスケジュール遅延を防げます。実務では現地事情に通じた担当者やサポート体制の有無が、進捗に大きな差を生むことが多いと感じます。
課題 | 解決策 |
---|---|
言語の壁 | 現地サポートの活用 |
手続きの煩雑さ | 担当者の経験が重要 |
書類修正指示 | 迅速な対応が必須 |
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