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2024/08/05
ベトナムの工業団地事情 (第3回) 工業団地選定方法
第3回 工業団地選定方法
今回は日本の製造業がベトナム進出する際の、工業団地選定方法と注意点ついてご案内したい。
視察
現地での視察は、ベトナムの工業団地情報を得る上で最も有効な方法である。最終決定を下す上でも、現地での視察は欠かせない。工業団地で送迎の車を用意してくれる場合もあるが、そうでない場合は運転手付きのレンタカーを手配するのが得策である。視察の際に確認しなければならないことはいくつもあるが、ここでは視察の際のチェックポイントを挙げてみたい。
- ロケーション:市の中心部や空港、港までの距離・所要時間、また、道路の状況の確認。日本人の管理職やベトナム人の事務職(通訳、総務、会計、他)のスタッフが異なる地区に住んでいる場合でも、シャトルバスが出ているケースがある。
- インフラ:給排水、電力、通信などの状況確認。工業団地によっては消火栓の未設置や電線引き込みが行われていないこともある。その場合はテナント側が工事費用を負担しなければならない。
- 建物:工場の建付け(壁や柱にひびが入っていないか、地盤沈下していないか)、天井高、床の耐荷重、搬出入スペース、採光用天窓、防火設備などの確認。工場内での事務所・トイレの有無。無い場合はテナント側が工事費用を負担しなければならない。
- 環境:工場内でのワーカー用の食堂の有無。また、工場の周りにゴミが放置されていないかなど、工業団地内の他のテナントのマナー確認。特にタバコの吸い殻の放置は火事の元となるので、注意が必要。通勤圏内に日本人が住めるようなサービスアパート、日本食レストラン、コンビニ、スーパーなどがあるかどうかという駐在員の居住環境の確認も重要。
デベロッパー(工業団地開発会社)との打ち合わせ
視察の際に工業団地の担当者と打ち合わせをする際のチェックポイントを挙げてみたい:
- 賃料と管理費:リース契約は3年からのケースが多い。レンタル工場の場合は㎡当たりの賃料が決まっているが、工業団地によっては、別途管理費を請求する場合もある。工場内に事務所・トイレが設置されている場合は、それらの賃料も追加される。賃料は3カ月分一括前払いが一般的で、本契約時に通常3~6カ月の賃料分の保証金を預けなければならない。これは退去時に無利息で返金される。ただし、工業団地によっては契約を途中で解約した場合、保証金が返金されない場合もあるため、事前の確認を推奨する。同様の広さを持つ工場で比較した場合、賃料が安い場合でも設備が整っていない、途中での解約を認めていないなどにより費用が高額になるケースもある。また、土地を購入する場合は、最大50年と定められている土地所有権の残存年数の確認が必要。
- 警備体制:工業団地としての警備体制(警備員、フェンス、監視カメラ)の確認
- カスタマーサービス:施設の不備(雨漏り、停電、他)があった場合のサポート体制の確認。ローカル資本の工業団地では日本語対応のスタッフがいないため、英語かベトナム語の対応になるので、素早い解決が難しい場合もある。
- ライセンス申請:投資登録証明書(IRC)、企業登録証明書(ERC)の取得に際し、申請費用は数千ドルになる。これらのライセンスの申請については、テナントが費用を負担する場合と工業団地側が費用を負担してくれる場合があるので、事前の確認が必要。
総括
まずは、500カ所近くあるベトナムの工業団地の情報を事前に日本で入手し、ロケーションや土地やレンタル工場・倉庫の大きさ、空区画、価格の相場、契約条件等を確認する必要がある。その観点からすると、ウェブサイトで現地を視察する前に基本的な情報を入手しておき、自社の希望する条件に合った工業団地を絞り込んでおき、その上で実際に現地を視察し、信頼のおけそうな工業団地を選択するのが得策だ。しかしながら、1~2回の視察でそれを見極めるのは容易ではない。そのため、進出支援の経験豊富なコンサルティング会社や会計事務所に相談するのが賢明と思われる。
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