懲戒処分
懲戒処分 概要
雇用者は職場の秩序維持及び運営を確保する為に、時間・技術・生産経営等の指揮の遵守についての「労働規律」を就業規則にて規定します。
「懲戒処分」とは、雇用者が、労働規律違反行為をおこなった労働者に対して「労働規律」の維持のため、一定の不利益措置を課すことです。
基本的には、懲戒処分は就業規則に基づき判定する必要があります。懲戒処分の手続きを進める際には、雇用者は労働法が定める原則を厳守し、適切な手順に則り、規定された全ての手続きを踏まなければなりません。そうすることをもって、労働争議等の将来の訴訟やトラブルを回避し、「必要な手続を踏まずに実施した懲戒処分が法令違反」として撤回されるリスクを極力抑えます。
【懲戒処分の種類】※労働法第124条に基づき。
懲戒処分は、違反行為の程度により種類があり、就業規則に明記されます。
①譴責
②6ヶ月を超えない昇給期日の延長
③降格
④懲戒解雇
違反行為の内容を、就業規則に定める懲戒処分と照らし合わせ、譴責から懲戒解雇に至る処分を決定します。
【懲戒処分の特定種類に沿った違反行為】
懲戒処分の実施後の労働紛争やトラブルを防止するために、懲戒処分の特定種類に沿った違反行為は自社の業務に即して就業規則に明記しておきます。
<懲戒解雇の対象となる違反行為> ※労働法第125条に基づき。
①職場で、窃盗、横領、賭博、故意の傷害、麻薬を使用する。
②雇用者の営業機密、技術機密を漏洩し、知的所有権の侵害行為、雇用者の財産・利益に対し重大な損害をもたらす行為、あるいは特別に
重大な損害を引き起こすおそれがある行為、または就業規則に規定される、職場におけるセクシャルハラスメントを行う。
※懲戒解雇処分の根拠とするため、就業規則において具体的に規定する必要があります。例えば、「営業秘密」、「技術秘密」や
「セクシャルハラスメント」等の定義、該当対象の確定、懲戒対象となる損害額の確定等です。
③昇給期日延期または降格処分を受けたにもかかわらず、その処分が解消される前に再犯する。
※再犯とは、労働者が懲戒処分を受け、労働法第126条の規定によりその処分が解消される前に、懲戒処分を受けた違反行為を再び行う
ことを言います。懲戒処分の解消までの期間は、昇給期日延期処分は6ヶ月、降格処分は3年です。
④正当な理由なく30日以内に合計5日、または365日間に合計20日無断欠勤した。日数は仕事放棄の最初の日から計算される。
※正当な理由があるとみなされる場合は、天災、火災、自己または親族が疾病に罹患し、それについて医療機関の診断書がある場合、
および、就業規則で定めるその他の場合などです。
<譴責、6ヶ月を超えない昇給期日の延長、降格の対象となる違反行為>
懲戒解雇の対象となる違反行為は労働法に明確に規定されていますが、懲戒解雇以外の懲戒処分については詳細が規定されていませんので、
自社で決定することができるものと理解されています。
懲戒処分の対象となる一般的な違反行為は次の通りです。
・秩序を守ることなく職場を乱すこと。
・上司の指導に従わず、自分勝手に仕事を進めること。
・凶器、兵器、爆発物、麻薬などの危険品を会社に持ち込むこと。
・業務時間中の飲酒。
・秘密情報の漏洩。
・会社の名称を利用し、個人の金銭目的に書類を違法的に使用すること。
・自分の担当と関係がない書類及びデータを勝手に閲覧、コピー、破損させること、または他人に同様の行為をさせること。
・故意に会社のもの或いは従業員のものを破損させること、または他人に同様の行為をさせること。
・自分の履歴書を偽証すること。
・会社の消防消火規定を守らないこと。
・正当な理由がなく無届けの遅刻・早退・外出をすること。
・出入禁止場所に立入ること。
・不正に勤怠処理をすること。
・勤務時間中に居眠りをすること。
・社内衛生環境を守らないこと。
・規定の通りに制服、名札、職場の保護用具などを使用しないこと。
・他の従業員に対し精神的または肉体的に恐喝すること。
・ベトナムの法律において違反行為である賭け事、ギャンブル、高金利の貸付などを行い、会社の風紀を乱し規則を破ること。
・会社での肩書を利用し、個人の金銭目的に書類を違法的に使用すること。
・監督者や責任者がセクシャルハラスメントの可能性のある事件を会社へ報告しないこと。
・セクシャルハラスメントの可能性を報告した人物に対して報復すること。
【懲戒処分の実施原則】※労働法第122条に基づき。
<1>懲戒処分の種類と該当違反行為(事由)を就業規則に明記すること
※就業規則に明記をしていない場合、懲戒処分を適用できません。
※感覚や慣例ではなく、具体的に懲戒処分該当者のどの行為が、就業規則上の懲戒処分の対象となる違反行為に該当するかを示した上で
処分を行うことが求められます。
<2>労働法が定める懲戒処分の手順・手続に関する規定を厳守すること。
◆
◆懲戒処分の流れ「ステップ①」処分対象者の違反行為の確認
・処分対象者が違反行為を行っている時に発見した場合、雇用者は規律違反記録書を発行し、処分対象者が構成員である基礎レベル
の労働者代表組織と法定代理人(処分対象者が15歳未満である場合)に通知します。
・処分対象者が違反行為を行った後に発見した場合、雇用者は懲戒会議に備え証拠を収集します。(特に、処分対象者の過失を
立証する為の証拠です)
「ステップ②」懲戒会議招集の通知
・懲戒会議の開催日の最低5営業日前に、雇用者は、「処分対象者」、「法定代理人」(処分対象者が15歳未満である場合)と
「処分対象者が構成員である基礎レベルの労働者代表組織」に通知します。
・必須通知内容は懲戒会議の内容・日時・場所、処分対象者の氏名・違反行為です。
「ステップ③」出席人数の確認
・通知書の受取後、該当参加者は出席有無を雇用者に返信しなければなりません。
・いずれかの参加者が出席できない場合、雇用者と処分対象者は懲戒会議の日時・場所の変更を相談することができますが、合意に
達しない場合、雇用者の決定によります
・参加者が出席有無を返信しない場合、当日欠席の場合、雇用者はスケジュールの通りに懲戒会議を開催することができます。 「ステップ④」懲戒会議の開催
・懲戒会議の内容は議事録に記録され、終了前に出席者全員の署名にて承認されます。
・この議事録に署名しない出席者がいる場合、書記はその出席者の氏名と理由(ある場合)を議事録に明記しなければなりません。
「ステップ⑤」懲戒処分決定書の発行
・懲戒処分決定を、労働法が定める懲戒処分の時効の期日前に発行します。
・この決定書は発行後に全ての出席者(欠席者を含む)へ送付しなければなりません。
<3>労働法が定める懲戒処分の時効を厳守すること。 ※労働法第123条に基づき
・懲戒処分の時効は、違反行為発生の日から6ヶ月です。違反行為が直接的に雇用者の財政、財産、営業機密、技術機密の漏洩に
関連する場合は、労働規律処分の時効は12ヶ月です。
・労働法第122条4項が規定する期間が満了して、時効期間が経過した、又は時効期間が残存しているが60日に満たない場合、
懲戒処分のために時効期間を延長することができますが、上記の期間満了の日から60日を超えてはなりません。
<4>雇用者が労働者の過失を立証すること。
<5>懲戒処分を受ける労働者が構成員である基礎レベルの労働者代表組織が参加すること。
<6>労働者が出席し、自己弁護し、弁護士や労働者代表組織に弁護を依頼すること。
※15歳未満である場合は法定代理人の参加が必須です。
<7>懲戒処分は議事録に記録されること。
<8>一つの労働規律違反行為に対して複数の懲戒処分を禁止すること。
<9>同一の労働者が同時に労働規律違反行為を多数行った場合は、最も重大な違反行為に対する最も重い処分のみを適用すること。
<10>精神疾患その他の疾病に罹患して自己の認識能力や行動制御能力を喪失している間は、その労働者の労働規律違反に対する
懲戒処分を禁止すること。
<11>労働法が定める以下の期間にある労働者に対しては懲戒処分を禁止すること。
・労働者が疾病・休養中の場合や、雇用者の同意を得て休暇を取得している期間。
・身柄を留置・拘留されている期間。
・労働法第125条1項と2項に規定する違反行為について調査、検証・結論を出す権限を有する機関の結果を待っている期間。
・女性労働者が妊娠中、産休中、または生後12ヶ月未満の子を養育中の期間。
<12>懲戒処分の際の禁止行為を厳守すること。 ※労働法第127条に基づき
・労働者の健康、名誉、生活、名誉、威信、尊厳の侵害行為。
・懲戒処分の代用としての罰金や賃金の減額。
・就業規則に定めがなく、労働契約で合意されていない、または労働法およびその関連法令において定められていない違反行為をした
労働者に対する懲戒処分の実施。
【業務の一時停止】※労働法第128条に基づき。
①雇用者は、複雑な性質を持つ違反で、労働者が勤務を継続すると証明が困難になるとみられる場合、労働者の業務を一時停止する権利を
有します。労働者の業務の一時停止は、業務の一時停止を検討される労働者が構成員である基礎レベルの労働者代表組織の意見を参考にした
後のみに実施されます。
②業務の一時停止期間は最大15日、特別な場合でも90日を超えません。業務の一時停止中、労働者は業務一時停止前の賃金の50%の前払いを
受けます。業務の一時停止期間が満了すると、雇用者は労働者が勤務を再開することを受け入れなければなりません。
③労働者が懲戒処分を受ける場合、その労働者も前払いを受けた賃金を返済しなくてもよいです。
④労働者が懲戒処分を受けない場合、雇用者は業務一時停止期間の賃金全額を支払します。
【懲戒処分の解消、懲戒処分執行の期間の短縮】
・引き続き労働規律違反がない場合、処分の日から、譴責処分を受けた労働者は3ヶ月後、昇給期間の延長の懲戒処分を受けた労働者は
6ヶ月後、降格を受けた労働者は3年後に、当然に規律処分は解消されます。
・昇給期日の延長の懲戒処分を受けた労働者が、期限の半分を経過した後に改善、進歩がみられる場合は、雇用者は期限短縮を検討します。
懲戒処分書類のテンプレート
※テンプレートとしてご活用ください。あくまで文例ですので必要に応じて文章を変更してご利用ください。
①業務の一時停止 決定書
テンプレート名 | 業務の一時停止 決定書 | KLLĐ-01 |
ファイル形式 | ||
書式テンプレート概要 |
本決定書は、複雑な性質を持つ違反で、労働者が勤務を継続すると証明が困難になるとみられる場合に労働者の業務を一時停止を実施するために必要です ※留意: ・業務の一時停止期間は最大15日、特別な場合でも90日を超えてはいけません。 ・業務の一時停止中、労働者は業務一時停止前の賃金の50%の前払いを受けます。懲戒処分を受ける場合には この前払いの返済は不要です。懲戒処分を受けない場合には雇用者は業務一時停止期間の賃金全額を支払います。 |
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ご利用規約・免責事項 |
・本テンプレートをご利用いただく場合は、お客様のご判断と責任におきましてご利用をお願いいたします。 ・本テンプレートのご利用によるトラブルに関しては弊社で一切責任を負いかねますのでご了承下さい。 |
②規律違反 記録書
テンプレート名 | 規律違反 記録書 | KLLĐ-02 |
ファイル形式 | ||
書式テンプレート概要 |
本記録書は、社内の従業員による規律違反があった場合に作成されるものです。懲戒処分を実施するための基礎で あり、今後の関連発生問題(ある場合)を解決するために必要です。 |
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ご利用規約・免責事項 |
・本テンプレートをご利用いただく場合は、お客様のご判断と責任におきましてご利用をお願いいたします。 ・本テンプレートのご利用によるトラブルに関しては弊社で一切責任を負いかねますのでご了承下さい。 |
③事件の経緯 報告書
テンプレート名 | 事件の経緯 報告書 | KLLĐ-03 |
ファイル形式 | ||
書式テンプレート概要 | 本報告書は、規律違反行為を行った労働者が事件の経緯等を報告する為の書類です。実際には労働者が如何してもこの報告書を作成しない場合もあります。 | |
ご利用規約・免責事項 |
・本テンプレートをご利用いただく場合は、お客様のご判断と責任におきましてご利用をお願いいたします。 ・本テンプレートのご利用によるトラブルに関しては弊社で一切責任を負いかねますのでご了承下さい。 |
④懲戒会議招集 通知書
テンプレート名 | 懲戒会議招集 通知書 | KLLĐ-04 |
ファイル形式 | ||
書式テンプレート概要 | 社内の従業員による規律違反があった場合の懲戒会議招集について通知する為の書類です。 ※留意: ・事前通知期間は懲戒会議の開催日の最低5営業日前です。 ・通知必須対象は「処分対象者」、「法定代理人」(処分対象者が15歳未満である場合)と「処分対象者が構成員で ある基礎レベルの労働者代表組織」です。 参加者が出席有無を返信しない場合、当日欠席の場合、雇用者はスケジュールの通りに懲戒会議を開催することができます |
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ご利用規約・免責事項 |
・本テンプレートをご利用いただく場合は、お客様のご判断と責任におきましてご利用をお願いいたします。 ・本テンプレートのご利用によるトラブルに関しては弊社で一切責任を負いかねますのでご了承下さい。 |
⑤懲戒処分の実施 議事録
テンプレート名 | 懲戒処分の実施 議事録 | KLLĐ-05 |
ファイル形式 | ||
書式テンプレート概要 |
本議事録は、懲戒会議の内容を記録するためのものです。規律違反行為を行った労働者に対して懲戒処分を適用する為の基礎であり、今後の関連発生問題(ある場合)を解決するために必要です。 ※留意: ・懲戒会議の出席者全員が本議事録に確認署名をすること。 ・署名しない出席者がいる場合、書記はその出席者の氏名と理由(ある場合)を議事録に明記すること。 |
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ご利用規約・免責事項 |
・本テンプレートをご利用いただく場合は、お客様のご判断と責任におきましてご利用をお願いいたします。 ・本テンプレートのご利用によるトラブルに関しては弊社で一切責任を負いかねますのでご了承下さい。 |
⑥懲戒処分 決定書
テンプレート名 | 懲戒処分 決定書 | KLLĐ-06 |
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書式テンプレート概要 |
本決定書は、規律違反行為を行った労働者に対して懲戒処分を適用する為の基礎であり、他の関連手続き(各種保険、給与、不服申立、労働争議等)を実施するために必要です。 ※留意: ・就業規則或いは労働法第125条に規定される違反行為のいずれかに該当する違反行為による懲戒処分であること。 ・労働法に基づく時効の期日前に発行すること。 |
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ご利用規約・免責事項 |
・本テンプレートをご利用いただく場合は、お客様のご判断と責任におきましてご利用をお願いいたします。 ・本テンプレートのご利用によるトラブルに関しては弊社で一切責任を負いかねますのでご了承下さい。 |
⑦懲戒処分の解消 決定書
テンプレート名 | 懲戒処分の解消 決定書 | KLLĐ-07 |
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書式テンプレート概要 | 本決定書は、懲戒処分を受けた労働者に対して懲戒処分の解消を確定するための基礎であり、他の関連手続き (各種保険、給与、不服申立、労働争議等)を実施するために必要です。 |
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ご利用規約・免責事項 |
・本テンプレートをご利用いただく場合は、お客様のご判断と責任におきましてご利用をお願いいたします。 ・本テンプレートのご利用によるトラブルに関しては弊社で一切責任を負いかねますのでご了承下さい。 |
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