ベトナムの工業団地事情(第6回)ワーカーの福利厚生
第6回 ワーカーの福利厚生
ベトナムで生産活動を続ける上で、ワーカーの福利厚生については綿密に考慮しなければならない。ベトナムでは離職率が高く、そのため優秀な人材に長く働いてもらうために、福利厚生の面で他社と差別化させていく必要がある。本稿では、ベトナムに進出している日系企業で実際に行われている福利厚生についてご紹介したい。
手当の支給
以下のような手当を支給することが一般的である。
1.通勤手当:通勤するワーカーに、タクシー代やバイクのガソリン代などの手当を給付する福利厚生である。現地在住のワーカーはバイクでの通勤が大半を占める。そのため、ガソリン代の変動で、給付額を変更する場合もある。日本駐在員の場合、タクシーか社用車での通勤が基本だ。
2.住宅手当:ワーカーの家賃などに手当を給付する。駐在する局員のために、会社がマンションのオーナーと契約していることがある。現金を給付するよりも、個人所得税が安くなるためである。平均して、25万~30万VND(約1,500円~1,800円)を支給しており、高くとも60万VND(約3,600円)程度を支給することが多い。
3.食事手当:毎日会社が支給するランチのクオリティで隣の工場に転職してしまう場合もあり、昼食においても手を抜いてはいけない。現金の直接支給もあるが、現物支給や食堂を設置しておくケースも多い。昼食のみ支給、朝食と昼食支給、一律での支給、労働した日に応じて支給など、様々なパターンで支給されている。
労災保険/健康診断
ワーカーの健康は、製造業者にとって最も重要な事項の一つである。ワーカーのけが・病気が発生した際に、損害を補填するため、労災保険への加入は検討しなければならないだろう。ベトナムに進出している日系企業では、自社のワーカーの労災保険への加入を済ませている場合が多い。そうでなくても、個人でベトナムの企業に勤める場合は個人向けの労災保険が用意されているため、安心だ。
ワーカーの健康診断も重要である。ベトナムでも日本と同様、会社側が従業員に健康診断を受けさせなければならないため、ほとんどの日系企業はワーカーの健康診断に係る費用を負担している。特に海外からベトナムに働きに来ているワーカーの場合、労働許可証やビザの取得の健康診断書は必須となるため、健康診断の有無は重要である。
企業ごとに実施している福利厚生
上記の福利厚生に加え、企業ごとに独自の福利厚生を実施している場合がある。その数や種類も企業により多種多様だ。ここでは、日系企業で比較的メジャーに実施されている福利厚生についてご案内する。
1.皆勤手当:特にベトナムではワーカーの離職率が高く、皆勤手当が設けられている場合が多い。休まずに働くと手当として支給されるのである。同様に、年功手当といった数年間働き続けることで手当が発生する福利厚生も存在し、中には表彰することもある。派遣社員にも同様の制度が存在し、100日間働き続けるとボーナスが発生する、などでより長く働いてもらおうとしている。
2.社員旅行:会社に余裕ができたら、年に一回程度、社員旅行・慰安旅行で近隣のリゾートに行くことも多い。正社員のみではなく、家族の同行も許し、その負担の何割かを担う場合もある。また、懇親会・バーベキューなどを年に数回行う企業も存在し、社員同士の関係性の構築が重要。
3.資格手当:資格を取得した際に発生する手当。日本語能力試験の合格など、言語に対しても手当が出る語学手当の場合も。資格の取得難易度に応じて手当の金額が変化するなど、成長意欲を沸き立たせるように設計しなければならない。
この他にも、子どもが生まれる際の妊娠手当、産休・育児休暇、テトなど季節ごとのイベントなど、日本でも見られるような福利厚生が実施されている。こういった福利厚生はワーカーに長く働いてもらう点においても効果的であるたとえばワーカーの誕生日に何かプレゼントを渡すなど、日ごろのコミュニケーションは定着率を上げるためにも重要である。
総括
福利厚生の実施は、ワーカーの定着率を上げるため、という側面が大きい。ベトナムでは製造業のワーカーレベルだと月に100人辞めることもあり、1カ月で数十人単位の変動も珍しくない。優秀な人材により長く働いてもらうため、こうした福利厚生の実施は必須と言えるだろう。また、こういった手当を給付するために必要な事項を、綿密に定めておくと、トラブルを未然に防ぐことができる。そのため、福利厚生については詳細に決めておかなければならない。
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